吠える!ホエールウォッチングショートショート とりぶうの読むコント~宮古島  保安検査場の真ん中で夫の名を叫ぶ ~吠える!ホエールウォッチング(1)慶良間ブルーへ ~吠える!ホエールウォッチング(2)クジラジラ! ~吠える!ホエールウォッチング(3)われら運命共同体 ~吠える!ホエールウォッチング(4)でけえっ! ~吠える!ホーエルウォッチング(5) 


保安検査場の真ん中で夫の名を叫ぶ ~吠える!ホエールウォッチング(1)

テーマ : 日記 ジャンル : 日記




みなさんこんにちは。

20年前。

ニュージーランドのカイコウラという町でホエールウォッチングをしようと思ってたのが、なんの理由だったか中止になり。

ウォッチングがかなわないまま、こんにちまで至り。

泳ぐクジラを見ることは水族館以外ではもうないであろうと思っていた矢先。

しかちくが沖縄でホエールウォッチングをしようと提案。

先週日曜日、行ってきた。

ふだんクジラは北の海にいるらしい。

北の海て、相撲取りの名前じゃないよ。(わかってるわ)

ベーリング海とかの冷たい冷たい北の海。

それが、1月から3月ころ、繁殖と子育てのために南下してくるらしい。

それもフジツボをくっつけてることで有名なザトウクジラが見られるらしい。





ザトウクジラ 001




正直、ザトウクジラなどといいうでかそうなクジラはハワイ沖などの太平洋の真ん中まで行かねば見られないだろうと思ってたので、意外だった。

ザトウクジラは沖縄近海と、あと、小笠原と、あと、まあどっかそこらへんで見られるらしい。(いい加減な情報)

ふだん気楽に見ていた海も、ひょっとしたらクジラがウヨウヨいるかもしれんのである。

なんだか怖いような恐ろしいような気持ちになる。(どっちもおんなじやん)

那覇から船に乗ってホエールウォッチングできるところがあるというので行ってきた。

しかちくとわたしとうさQの3人で行ってきた。

沖縄本島に住んでいるうさQとは那覇で合流するのであるが、飛行機に乗る前、宮古島の保安検査場でさっそくわたしはつかまった。

ちなみに保安検査場というのは、手荷物をチェックするところ。

しかちくがさっさと行ってしまったあと、わたしの前には高齢のご婦人が3人いて手間取っていた。

手荷物がやたら多く、そのうえチケットもどれがどれかわからず、全部取り出してはあーでもないこーでもないと言い合っている。

わたしはじゃっかんいらつきながらも、イライラしてはいけない、自分も行く道、行く道、と思いながら待っていた。

そうしてわたしの番である。

さっそうとチケットをかざし、通り抜けようとすると。

係官が、

「ちょっとまってください!」

とわたしを止めるではないか。

そしてチケットを見て、「一度通られました?」と聞く。

「いいえ」と答えると、係官は、このチケットですでに通った人がいるのであなたを通すことはできない、という。

一瞬、

ワナにはめられたのか?
わたしはロシアのスパイかよ!

と突っ込もうとおもったが、そんなことはできる雰囲気でもなく、要するに、自宅のパソコンでプリントアウトしたとき、間違えて同じものを2枚印刷してしまったのだった。

係官は「お連れの人を呼んでもらえますか」という。

わたしはあわててしかちくを呼びに行こうと金属探知機の門みたいなやつを通ろうとすると、

「あなたは通れません!」

とストップがかかる。

いやいや、ここは関所じゃないでしょ?ああ、関所なの。

しぶしぶ戻ったのだけど、しかちくの姿は見えず、途方に暮れる。

係官は、「スマホか携帯で呼べませんか」と気軽にいう。

が。

わたしたちはまれに見る化石夫婦。

ふたりで共通のガラケーひとつで日々過ごしている。

そのうえ、そのガラケーは今、わたしのかばんに入ってる。

しょうがなく、でっかい声で「しかちくー!しかちくー!」と叫ぶ。

しかしやってきたのは別の係官。

わたしの状況を見て、

「スマホで連絡つきませんか?」

という。

だから!

むりなんだってば!

わたしはどうしたらよいかわからず、

「赤いジャンパーの男性なんです!」

と言い、だれかに探してきてもらうよう大声でしかちくのいでたちを説明していると。

向こうから当の赤いジャンパーの男性がやってきた。

わたしの顔を見て、引き返そうとするので、

「しかちくっ!ちょっと!来て!」

とあわてて大声で引き留めた。

なんで一瞬引き返そうとしたんかな。

結局しかちくも外に出され、あらためて受付でチケットを発行してもらいどうにか飛行機に乗ることができた。

わたしの前で手間取っていたおばあさんたちを見て、行く道行く道、と余裕ぶっこいていた自分が恥ずかしすぎる。

しかちくに顛末を話すと、

「そんなときは大声や。とにかく大声で叫ぶことが大事」

というアドバイスをいただいた。

できるならば今後使う場面がないことを願うばかりなのだけど、一応肝に銘じておきたい。

しかし、いままでこんなうっかりミス少ないほうだったのに、情けない。

自分で自分を裏切ることがあるということがわかった。

ひょっとしてなんらかのスパイがわたしの中にいるのかもしれんなあ。


つづく。

それでは~


とりぶう


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慶良間ブルーへ ~吠える!ホエールウォッチング(2)

テーマ : 日記 ジャンル : 日記



みなさんこんにちは。

ホエールウォッチングに行く話の続きです。

那覇からホエールウォッチングに行くのは、世界遺産に指定された慶良間諸島のあたり。

慶良間ブルーが広がる海である。

世界三大ブルーのひとつ慶良間ブルー。

あとのふたつは北野ブルーとマリッジブルーである。(共通点ゼロやろ)

しかし慶良間ブルーがいかに美しかろうとも、行くのは船である。

船酔い体質のわたしとうさQは、それに対して少しブルーになるのであった。

これも慶良間ブルーのひとつである。(うそつけ)

万全を期すため、前日から食事ひかえめ。

すしや焼き肉、ラーメンなどしか食べられなかった。(じゅうぶんや)





準備万端 001





さて朝早く。

おなかをすかせたヒナならぬ、しかちく、うさQ、わたしの三人は、受付事務所に向かう。

しかし朝早すぎてまだ人が来ていない。

しばらくコンビニなどに行き、時間をつぶす。

考えてみると、わたしたちは行動が早めどころか早すぎめのことが多い。

これが干支を決める日であれば、ダントツ一位間違いなしである。

ネズミ年の前にシカ、トリ、ウサギ、になったかもしれんなあなどと、ヒマ人のイマジンはとどまることを知らないのであった。

乗船時刻まで別の場所で時間をつぶして戻ってみると、船にはすでにたくさんの乗客がいた。

みんなおそろいの服着てるわ~、と思ったらライフジャケットだった。

わたしたちもおそろいの仲間入りをし、おとなしく座る。

中国語の看板もあったので、ひょっとしたらわたしたち以外、ほとんど中国人かもよ~、

ようやくわたしの中国語の「いらっしゃいませ=歓迎光臨(ホァンイングアンリン)」が役にたつかもよ~、

ラジオ中国語を半年聞いても「歓迎光臨(ホァンイングアンリン)」から一向にすすまないけど、

とりあえず役にたつかもしれんよ~、

と思ってたけど。

ほとんどが日本人であった。

ひとりだけ中国人かも?と思える女性がいたが、「歓迎光臨」を言えるチャンスは皆無であった。

というか、わたしはスタッフでもないので「いらっしゃいませ」といわれても彼女も戸惑うだけであろう。

参加者はさまざまであった。

家族連れもいたし、カップルもいた。

一人参加も、友達同士もいた。

老いも若きもちびっこもいた。

みんなクジラ気分なのであった。

しかしわたしは思っていた。

クジラをそんなに堪能できるはずはないジラ。

ホエールウォッチングでクジラをおなかいっぱい見たという話など、聞いたことないジラ。

見れたとしても、遠くにクジラが吹き上げる噴水が見えたらよし、くらいな見え方にちがいないジラ、

と思っていた。

そのために双眼鏡を持ってきたのだ。

飛行機のチケットは同じものを二枚印刷してしまったくらいうっかりしてたのに、

双眼鏡だけはしっかり持ってきたのである。

スタッフのお兄さんが説明でクジラが遠くに見えたら知らせてください、というので、

わたしは張り切っていた。

そして船が出ると、双眼鏡をのぞきっぱなしなのだった。

がすぐにそれもやめた。

考えてみたら、そこはまだ港の中なのでこんなとこにクジラはいるはずもないジラ、と思ったからであった。

そして、その後双眼鏡を取り出すことはなかったのだった。(なんやそれ)

つづく。

それでは~


とりぶう


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クジラジラ! ~吠える!ホエールウォッチング(3)

テーマ : 日記 ジャンル : 日記



みなさんこんにちは。

ホエールウォッチングの三回目です。

わたしたちの参加したツアーではナガンヌ島という無人島に少し上陸したのち、クジラを見に行くというもの。

ナガンヌ島は夏になると海水浴客がたくさんやってくるらしく、宿泊施設などがあるのだけど、シーズンオフはだれもいない。

そのためナガンヌ島に上陸するに際し、スタッフのかたは、

「トイレは船でしてください!スタッフがいないのでトイレに行くのは船でお願いします」

と何度も言ってたので、とくに泳ぐこともなくただ海を見るだけだというので、

そんなことならナガンヌには行かんでもいいんぬ。

と思った。

が、それはわたしが宮古島から来てるからであって、阿佐ヶ谷姉妹みたいな女性の二人連れはとてもうれしそうに写真をたくさん撮っていたので、わたしも阿佐ヶ谷から来たらきっとうきうきしてただろうと思った。

さて無事にナガンヌ島観光も終え、いざホエールウォッチング!である。

このツアーではクジラ見れる率90パーセントを誇るという。

見られなければ返金するという。

ライザップ並みの強気である。

絶対の自信がなければそんなことはできぬ。

しかししかちくが言うには、そのツアーの中のだれかがひとりでもクジラを見たら「見えた」ことにカウントされるという。

え~、と思った。

たしかにライザップも一度やせたらあとは野となれ山となれである。

沖縄在住のアーチスト「H」の頭文字を持つバンドのボーカルの女性も、一昨年あたりライザップで「誰!?」というくらいやせてたけど、今は「あれれ?」というくらいもとに戻ってるしな。

あれは、一応の結果が見えるというのを売りにしているのである。

でもあたしだけ見えへんかったらどうしよう。

不安になってきた。

船はそんなわたしの思惑をのせて進む。

わたしたち乗客は、ドナドナの牛のように一階部分におとなしく座っていたのだけど、いきなりスタッフのお姉さんが、

「見えた!」

と言うではないか。

それに続いて、

「ほんとだ!」

という乗客の声。

ああ、これで返金はなくなった。(せこいよ)

わたしも声のほうに顔を向けたのだけど、そうそうクジラも都合よく出てきてくれる気はないようで、クジラの気配を察知することはできなかった。

お姉さんが二階に上がってもいいというので、あがるとすぐに、

「あ!あそこ!」

と誰かが言う。

首を回すと、遠くで潮を吹くのが見える。

おった!

クジラが九時の方向におったジラ!

ほんもののクジラジラ!




おった 001





こんな広い海で、ほんまにクジラに遭遇できるとは感動ジラ。

それもわりとすぐに遭遇したジラ。

もっともったいぶった登場のしかたかと思ったのが、拍子抜けジラ。

これでもう確実に返金はないジラ。(だからせこいよ)

返金がないのだったら、がんがん探してやるジラ!

わたしはがぜん張り切るのであった。

つづく。

それでは~


とりぶう


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われら運命共同体 ~吠える!ホエールウォッチング(4)

テーマ : 日記 ジャンル : 日記





みなさんこんにちは。

ホエールウォッチングの4回目。

クジラの登場とともに、にわかに活気づく船内。

「クジラが見えたら進行方向を12時として何時の方向に見えた、というふうにおっしゃってくださいねー」

とスタッフのお姉さん。

ヨシ!

ヨ~シ!

わたしは気持ちが引き締まるのであった。

だって、長年のあこがれの言い方、「○時の方向」が言えるのだ。

アメリカ映画などで、銃を構えた警官が、

「2時の方向に二人確認」

とトランシーバーで教えるあれなのだ。

いち早く○時の方向にクジラ発見!を知らせたい、と心ははやる。

すると、

「あ、あっち!」

とだれかの声。

声のほうを向くと、背びれがゆっくり海面をすべるのが見える。

「お~~~!」

と声があがる。

ほどなくして、

「あ!あっち!」

と反対方向から声。

顔を向けると、クジラが走り高跳びの背面跳びよろしく、体をうしろにそらせながら半分以上水面から出してジャンプしているのが見えるではないか!

「お~~~~!!」

と歓声と拍手が起こった。

ザトウクジラ 001



そのジャンプはブリーチングといって、クジラが寄生虫をとるためにやるとか、求愛行動とか、単なる遊びとかいろんな説があるらしいのだが、ともかくわたしたちだけではなく、そこにいた人々がいちばん見たいクジラの姿がそれであった

スタッフのお姉さんも、

「これはいきなりラッキーですよ!」

と興奮気味。

ブリーチングが見られるのはホエールウォッチングでも15~20%の確率らしいので、お姉さんの興奮ももっともなのだった。

みんな大はしゃぎ。

われ先に次のジャンプを見つけようと、めいめいが自分のベストポジションを確保するのであった。

船はクジラが見えたらすぐに方向転換してそっちのほうに向かうので、けっこう揺れる。

しっかりつかまっていないと転びそうになる。

しかちくは天井のポールを握りしめ、サルみたいなかっこうをしているので、

「しかちゃん、そのかっこうしんどくない?大丈夫?」

と聞くと、

「ボルダリングで鍛えてるから大丈夫!」

とイナバの物置みたいなことを言う。

一週間前にジョギングで足を痛めたのに。

「ボルダリングで腕を鍛え、ジョギングで足を痛めてたら世話ないわ」

そんな軽口をたたいていると、うさQが、

「あー、あっち!」

と声を上げる。

遠くに尾びれが見える。

スタッフお姉さんいわく、

「尾びれは個体識別に役にたつんです。みんなそれぞれ違うんですよ」

と教えてくれた。

わたしは次は自分が探すのだ、と目を皿のようにして海を眺めるのだけど、

「あー、こんどはあっち!」

とまたもやうさQが声を上げるのだった。

しかちくもボルダリングのかいあってか、

「この展開で行くと、今度はあっちやな・・・・・・・あ、ほらっ!」

と見当をつけたところでばっちり発見。

各自、大興奮であった。





出遅れ気味 001





まあ、出遅れ気味ではあったけれども。

わたしももちろん大興奮であった。

しかし、そんな中。

ちびっこは大泣きしていた。

「いやだ、いやだ、おうちに帰りたいよう~」

と抱っこされながら泣く4、5歳くらいの女の子。

お母さんは叱咤激励して、

「ほら、ここつかんで、落ちないようにしっかり握って!」

と船の手すりを握らせようとするのだけど。

小さな子供にとってみたら、手すりを握るのすらおそろしく、下手したら海に落ちてしまいそうな揺れの中、

なんでこんな苦痛を金を払ってやらせてんだよ、うちの親は!と思うに違いないと思った。

いつのまにかその一帯は、クジラを追ってやってきた船であふれていた。

それぞれの船に3、40人ほどの乗客。

発見されたクジラはまだ1匹である。

1匹のクジラに対して、約200人。

みんなおそろいの赤やオレンジのライフジャケットをつけて、船の端にずらっと並んでいるのは壮観で滑稽ですらあった。

不思議なもので、ほかの船を見たとたん、自分たちの船がいちばんいいポジションでいてほしい、と思ってしまう。

ほかの船よ、遅れてしまえ、と思うことを避けれらない。

いままで、単なる他人としてしか認識していなかった同じ船のメンバーが、がぜん大切な仲間に思えてくる。

阿佐ヶ谷姉妹みたいな女性二人連れも、泣いてたちびっこも、一人参加の中国人も、手足タトゥーのカップルも、みんな大事なクルーなのだ。

ほかの船に負けるな!

いち早くクジラを見つけるのだ!

と叱咤激励したくなる。

そんな中、遠くのほうで潮が上がる。

「あ!あそこ!」

あきらかに別の個体。

船はそっちに向かおうとする。

が、

「あ!あっちも!」

今度はわりと近くで尾びれが見える。

船はどちらに向かうべきか迷うくらい、次々にクジラのひれが出現するのであった。

しかし「○時の方向」、という人はだれもいなかった。

結局、乗客はだれも「○時の方向」を言うことはなかった。

つづく。

それでは~


とりぶう

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でけえっ! ~吠える!ホーエルウォッチング(5)

テーマ : 日記 ジャンル : 日記



みなさんこんにちは。

ホエールウオッチングの5回目、最終回です。

クジラの出現からすぐにブリーチングという大ワザ(体の3分の2くらいを出してジャンプするやつ)を見てしまうと、それ以外のワザがしょぼく見えてしまう。

スタッフのお姉さんがいうには、クジラが見つからないときは1時間半くらいず~っと探し回るというので、それに比べたら2匹のクジラが交互に見え隠れするその状況は贅沢なものといえた。

みんながそれぞれ「あっち!」「そっち!」と見つけてはさけび、見つけてはさけびする。

わたしは自分で一番に見つけたものがなかったので、くやしさがつのるのだった。

しまいには「あっち!」とウソでも言ってやろうかと思った。

そして「アホが見~る、ブタのケ~ツ」と言ってやろうか。(自分がいちばんのアホや)

ところで。

見えるクジラは、どれもこれもが「尾びれのみ」とか、「背びれのみ」とか見えるだけのワザ(?)。

正直、「またそれか」と思ってしまう。

わたしぐらいのウォッチャーになると、それくらいだったらもうおどろかんジラね。

尾びれや背びれだけだったら、もう「お~」と叫ばんジラね。

にわかウォッチャーのくせに、プライドだけは一流である。

しまいには、

「出し惜しみするな!もっと見せろ!」

と叫びそうになった。

場末のストリップ劇場の下品な客の気持ちがよくわかるのであった。

おまけに2匹のクジラは9時と3時の方向にいたりする。

「あっち」と聞けば9時を見て、「そっち」と聞けば3時を見る。

その繰り返しであった。

そうしているうちにもうあと一回見れたら戻ります、と告げられた。

ああ、まあ、これくらいか。

ブリーチングが見えただけでも超ラッキーなんだから。

そう思っていると。

わたしたちの船の横、数メートルの水面下に、黒い影がす~っと通る。

先端が丸くでかく、巨大なアザラシの頭のよう。

「・・・あ、あ、わーーーーーーーーっ!!!」

わたしは叫んだ。

叫んだというより、吠えた。

クジラはゆったりした動きながら、確実なスピードで船の横をぐ~~~んと泳いでいった。




でけえっ! 001





どきどきするくらい、でかかった。

船内のひとたちがみんな、おーーーーと吠えた。

クジラはたくさんの船のあいだを縫って、悠々ともう一匹のクジラのほうへ泳いでゆくのだった。

その大きな姿を真横で見ることができたのは、たくさんの船の中でもわたしたちの船だけで、それも2階部分にいた人だけで、これはすばらしいラッキーというしかなかった。

「でかかったな!」

「ほんま、でーーっか、かった!」

わたしたちは口々にいかにクジラがでかかったかを語り合った。

そしてそのクジラを真横で見ることができたラッキーを語り合った。

それはブリーチングよりも感動的な出来事で、わたしにとってみたら一番先に見つけたのがそれだったのがうれしく。

「あっち!」とうそを言わないでおいてよかった、と思った。

野生に生きるもののでっかさというのは、こちらが生命の危機を感じるくらいのもので、それは津波とか洪水のような、もうひれ伏すしかないような怖さでもあった。

それが畏怖という感情なのかもしれない。

船長さんがいうには、いま通り過ぎたのはオスのクジラで、向こうにいるのがメスクジラだろうとのことだった。

この広い海でパートナーを見つけ、繁殖を繰り返し、子孫をつないでゆく。

クジラたちは、もうすぐ北の海に向けて出発する。

人間だったら泳いでなどとうていたどりつけないような遠いところまで、彼らは泳いでゆくのだなあ、と思うと。

クジラたちにとってみたら、ホエールウォッチングの船たちは、いわば頭のまわりを飛び回るハエのようなものなのだろうと思った。

水面に見えたでかいクジラのことは、そのあとも時々思い出す。

思い出しては鼓動が速くなる。

「頭が丸かったな」

と思ってはにやにやしてしまう。

まるで大好きなアイドルに話しかけられたみたいな気分。

正直なんの期待もしていなかったホーエルウォッチングが、ものすごく得がたい体験となった。

そして得がたいがゆえに、もうホエールウォッチングはしなくてもいいかな、と思っている。

二回目でがっかりしたくはないのだ。

しかちくもうさQも帰りの船の中でうつらうつらしていた。

わたしはしかし、この海のすぐそこでまだあの大きなクジラたちが泳いでいるという興奮をかみしめていて、余韻に浸っているのだった。

おわり。

それでは~


とりぶう


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