2011年01月ショートショート とりぶうの読むコント~宮古島  牛乳嫌い~あなたができるまで 12だるま~あなたができるまで 13モラトリアム~あなたができるまで 14不安まんじゅう~あなたができるまで 15エアーズロック~あなたができるまで 16 


牛乳嫌い~あなたができるまで 12

テーマ : エッセイ ジャンル : 小説・文学


みなさま あけましておめでとうございます!



あけましておめでとう 2011


新しい年になるたびに、今年の抱負みたいなものを考えたくなるものです。

しかし、守れない。

いいかげん、自分の性分に気付きたいものです。

が。

凝りもせず、また考えてしまった今年の抱負を聞いてください。

今年は 粘り強く、そして自分の意思に忠実になる、ためにおだやかな心をもって、健康に生きてゆく、ことができるように、できるだけ笑顔で、イライラせず、でもときにはそんなことが守れない自分を許して、楽しく暮らしたい、と思っています。

よし。

これだけあいまいにしといたらええやろ。

ということで、昨年から続いている 『あなたができるまで』 の続きです。



※よろしかったら最初からどうぞ→あなたができるまで


娘よ。

わたしはずっと牛乳が苦手でね。

小学校のとき、給食のなかったわたしたちの学校でも、牛乳だけは強制的に飲まされた。

低学年のころはそれがイヤでたまらなくて。

よく『おなかをこわしてます』とウソをついて、牛乳を持ってかえったものだよ。

そんなわたしだから、小3のとき、キックベースボールで右腕を骨折したときには

「とりぶうは牛乳飲めへんから、骨が弱いんや」

みたいな泣きっ面にハチ発言をきょうだいに言われて、さんざんふてくされたものさ。

関係ないわ!というわたしの声はかき消され。

牛乳飲んでたら骨折まではいけへんかったかも、という雰囲気になった。

そうかもしれへんけど、今言われたら腹立つってこと、あるよ。

弱ってるときにはなぐさめ以外、どんな言葉も聞きたくないもんでね。

腕が痛い上に、心も痛かったよ。

しかし、学校でも、おなじことを数人から言われたので、

『牛乳嫌いのとりぶう』というキャッチフレーズはどんだけ浸透してるんだと驚いたよ。

隠してることって、恥のことから広まるもので。

『わりとやさしい』ってことも隠してるのにあんまり広まらないのが残念だと思ったね。

そのうえ、

『牛乳飲めへんかったら、とりぶうちゃんみたいに骨折る』

ということをだれかのお母さんが言ってたというのを聞いて、

牛乳なんてナンボのもんじゃい!

骨折上等!

と やさぐれたよ。



あなたができるまで12 1・3


中学生になって、何がうれしかったって、牛乳を飲まなくてもいいことだった。

奴隷解放宣言!というくらいうれしかったよ。

二度と牛乳なんて飲むもんか、ってますます やさぐれたよ。

だから小学校を卒業してから14年間。

わたしは牛乳をそのまま飲んだことはなかった。

それがね。

あなたを妊娠してから、わたしは牛乳を飲み始めた。

そう、生のまんまの牛乳を。

あれだけ嫌いで、嫌いで、たまらなくて。

骨折しても牛乳なんて飲みたくない、とやさぐれてたわたしが。

おなかのなかのあなたが、健やかに育ちますようにと思って、牛乳を飲み始めたんだ。

毎日、毎日。

ニュージーランドの牛乳は、かすかに草の風味がした。

牛が草を食べて出してるんだって味がした。

ちなみに。

発泡酒ばっかり飲んでて、たまにホンモノのビールを飲むと、

「あ、麦の味」

と感じるよ。

ちょっと例えが違うけど、素材の味がするというのは、ホンモノって感じがするという話さ。

苦手なレバーも食べた。

わたしの食べるものはそのまんま、あなたを作るんだと思うと、責任重大だと思ったよ。

人間、責任を与えられると変わるもので。

女は弱いけど、母は強いっていうのは、

責任感が女を強くしてるってことなんだと実感した。


娘よ。

冒頭でえんえんと今年の抱負を語ったわたしだけど。

言うまでもなく、毎年毎年。

みんなが健やかでいることは願っているよ。

なにも大きなことはできなくても。

健やかでいるということが、幸せだということに、

わたしは最近気付いてきたよ。



つづく

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だるま~あなたができるまで 13

テーマ : エッセイ ジャンル : 小説・文学


※よろしかったら最初からどうぞ→あなたができるまで


娘よ。

学校に通いながらも、おなかはだんだん大きくなってきてね。

不思議な感覚だった。

考えてみて。

太るのではなく、おなかが着実に皮膚を伸ばしながら大きくなるって感じ。

自分の体に、心臓がふたつあるって感じ。

人間も動物なんだと、しみじみ思った。

しかちくの夢の挫折は大きく。

苦悩することもあったけど。

実際、笑うことのほうがずいぶん多かった。

このとき、わたしたちはあなたのことを『だるま』と名づけてね。

いろんなことを話しかけようとしてた。

でも。



あなたができるまで13 1・4



自分のほうがだるまに近くなっていったよ。

おなかに話しかけるのは、気恥ずかしいものでね。

だいたい、わたしたちは結婚式ですら、気恥ずかしいふたりなもんだから、

どこかの芸能人みたいに、英語で話しかけたりなんか、まるでできなくて。

「わたしがママですよ~」

みたいなこと、恥ずかしいて言えるかいな、どの顔してママやねん!おこるでしかし!

と 心の中で横山やすしが大騒ぎしていたよ。

だから話しのついでに、

「しかちくは今日、インドネシア人やと思われたんやで。どんなんや、なあ、だるま」

とおなかに同意を求めるだけで、お互い、初めての親という立場に戸惑っていた。

わたしは、母になるという覚悟なんて全然できていなくてね。

ほんまかいな、ウソ言うたらあかんでしかし、どこのどいつが母やねん!

と心の中では、横山やすしが半分疑いながら大騒ぎしていたよ。

本能がいつかわたしを母にしてくれるのかもしれないと思っていたけど。

いまだにそれは不安。

12年、あなたの母をやっているけど。

まだ不安がいっぱいある。

ママはママでも、不安なままさ。




って、それがオチや言うんかい、なめたらあかんで、怒るでしかし!

ああ、横山やすしはまだ騒いでる。



つづく
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モラトリアム~あなたができるまで 14

テーマ : エッセイ ジャンル : 小説・文学


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娘よ。

ニュージーランドの英語学校での5週間の生活も、すぐに終わりはやってきた。

最後の授業のとき先生が、

「とりぶうはこれからどうするのか?」

と聞くので、

「ご存知のように、妊娠してますんで、日本に帰ります。

これからオーストラリアを旅行して、いったんニュージーランドに戻って、そして帰ります」

とこたえた。

先生は驚いた。

「あんた、妊娠してたのかよ!?」

と。

わたしこそ驚いたよ。

このおなか、全部、自腹だと思ってたのかよ!?

と。



あなたができるまで14 1・5


なんか、損した気分だったよ。

ともあれ。

わたしたちはニュージーランドを出ることにした。

オーストラリアに2ヶ月間。

せっかくだから、体の動く限り楽しまなければ、という気だった。

2ヶ月というとかなりの期間だと思うだろうけど。

ヨーロッパから来てる人の中には、

「毎年2ヶ月休暇をとる」

なんてのもいて、なんか理不尽だと思った。

たとえば、漫才のボケと突っ込みで、ネタも考えてしんどい思いをしてるボケと、あんまりしゃべらない突っ込みのギャラがいっしょ、というような理不尽だと思ったね。

飛行機の手配を済ませ、お互いバックパックをそれぞれひとつ背負った。

余分な荷物はスーツケースに詰めて、たまたま知り合った人の会社に、わたしたちがオーストラリアから戻るまで置かせてもらえることになった。

なんであんなことになったのか、今では思い出せない。

親切な人がいてよかったと思ってる。

オーストラリアは大陸だけあって、見所もたくさんある。

わくわくしたね。

おなかの中のあなたは、まだぴくりとも動かなかったけど。

あなたが産まれたら、確実に変わることがある。

そう思っていたからよけいに、身がひとつのうちにやっておかなければならないと思った。

かっこよく言えば、モラトリアムってやつさ。

猶予期間というやつ。

26歳のわたしは、ちょっとだけオトナになることを先延ばしにしたかったんだ。



つづく
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不安まんじゅう~あなたができるまで 15

テーマ : エッセイ ジャンル : 小説・文学

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娘よ。

妊婦としてオーストラリアを旅行するのは、当然不安だらけだった。

だいたいわたしは、慣れないところでは 不安のあんこを抱えたまんじゅうみたいなもので。

しかちくにも さんざんさんざん 不安を吐露した。

しかちくはそのたびに、『大丈夫!』と太鼓判をおした。

いったいその強さはどこから来るのか、とわたしは小柄な草食動物的人間を見て思ったね。

思うに。

わたしは不安まんじゅうだけど。

いつもどこかでチャレンジまんじゅうに変わりたいと思っていた。

でなければしかちくと結婚しなかったと思うよ。

わたしがしかちくを選んだ理由の最もたるものは、

おもしろい人生になりそうだから。

これに尽きる。

いつかわたしをチャレンジまんじゅうに変えてくれそうな人を望んでたんだ。

さて飛行機はオーストラリアのメルボルンに着いた。

いいよ、オーストラリアは。

北海道はでっかいどう

オーストラリアは大ストラリアだよ。

明るくて開放的で、なんかよかった。

結果的に、不安になる必要がないくらい、よかった。

わたしたちはすぐにアデレードに向かった。

アデレード~アリススプリングス~ダーウィン~西オーストラリア~パース~シドニー~ケアンズ





あなたができるまで15 1・6


これがわたしたちの旅程だった。

ほぼオーストラリアを網羅したね。

日本でも行ってないところはたくさんあるのに、オーストラリアはかなり行きつくした。

ちなみに我が故郷和歌山でも行ってないところはたくさんあって。

ときどき、

「和歌山にあるナントカってこれこれですよね~」

と聞かれるとこまる。

オーアイムソーリー、アイドンノウー

って謝りたくなる。

だいたいは 『大家族で育ったから』 というのを言い訳にしている。

言い訳になってないのが玉にキズだけどね。

なんじゃそりゃ。


アデレードは美しい街だった。

適当な大きさの都会でね。

市場によく行ったよ。

わたしたちは市場が大好きで。

いちば、いちばん!

と思ってた。

ところで、心の中でダジャレを言うのはそれほど面白くない。

自分しか笑わないからね。

でもこの いちば、いちばん! は、口にしても たぶんそれほどだれも笑わないと思うと、悲しい。

考え損だよ。

とほほ

アデレードからツアーに参加してカンガルー島にも行った。

(そのときのエピソード→カンガルー島の思い出

夜は安宿でトランプした。

しかちくにセブンブリッジを教えてあげて、わたしが勝ちまくった。

ちょっとしたストレス解消になった。

しかちくはいつも日記をつけていたよ。

彼はものすごい筆不精なのに、日記だけはマメで。

細かい文字でちみちみと書いていた。

ときどき読ませてもらうと、わたしのことも飾らずに書いてあるのでちょっとへこんだ。

例:とりぶうはまた文句ばっかり言ってる。責任を持つということを考えて欲しい。

みたいに。

言うまでもなく日記なので、赤裸々に書けばいいんだけど、文句を言いたくなった。

しかし言ったらまた 日記に書かれるんだろう。

悪循環とはこのことだと思った。


あれからも。

日記は、あいかわらず つけているみたいで。

『五年日記』というぶ厚いのに書いている。

最近では英語で書いてるからちょっと読む気がしない。

ナマケモノと笑っておくれ。

でもね。

その内容が、いつか楽しいことで埋まることをわたしはこころから願っているよ。

例:とりぶうは最近かなりチャレンジしている。ドバイではほんとに頼りになった。

と書かれる日がくることを。



つづく

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エアーズロック~あなたができるまで 16

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娘よ。

今のあなたには、見るもの聞くもの、すべてが不思議で興味深いものだろう。

オトナになると感動は、残念ながらうせてゆく。

さいきんはなかなか驚くことがないよ。

そうそう。

最近でいちばん驚いたのは、

『楽しんご』という人をネットで見たことだよ。

テレビをほとんど見ないと、そっちの世界のことは とんと疎くなる。

複数の人から名前は聞いたことがあっても、実際の『楽しんご』なる人を見たことがなかった。

それらの人の話を総合して、勝手にわたしが想像してたのは、『ウド鈴木』みたいな人だったんだけど。

まったく違った。

驚いた。

規格外な感じがした。

かなり衝撃だったから、それ以来、しかちくと『楽しんご』の話ばかりしているよ。

なにを言いたいかというと。

オトナになって行っても、オーストラリアは驚きの連続だったということ。

アデレードから飛行機に乗って、アリススプリングスという、オーストラリア大陸のヘソにあたる町に行ったとき。

飛行機から見える大地が、あまりに赤いことにまず驚いた。

黒や茶色の土しか見たことがなかった身には、衝撃の色だった。

そう。

初めて宮古島の海を見たときのような、感動と驚きがあった。

不毛の赤い土地に、とつぜん、ぽっこり存在するエアーズロック(アボリジニの言葉では『ウルル』)がまた異様でね。

岩だけど、何万年も動かない動物みたいに見えた。


あなたができるまで16 1・7



その広さと大きさを見てたら、サイズの感覚が狂いそうで。

火星か、ここは。

そんな気がした。

エアーズロックの近くには、『風の谷のナウシカ』のモデルとなったオルガ山(カタジュタ)が、どでかい岩の群れのわりには、のんきなまるさで存在していた。

どれもこれも規格外。

地球の不思議さを凝縮したようなところだった。

いまではエアーズロックにはのぼることが出来ないのだけれど。

そのとき1998年ではまだのぼることが可能でね。

しかちくはエアーズロックにのぼることにした。

わたしは大事をとってやめたんだけど。

やっときゃよかったな、とちょっと後悔してる。

きっと世界一大きな動物の背中に乗ったような気になったんじゃないかって、思うんだよ。


つづく

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