2011年01月10日ショートショート とりぶうの読むコント~宮古島  スポンサーサイト気球に乗って~あなたができるまで 17 


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気球に乗って~あなたができるまで 17

テーマ : エッセイ ジャンル : 小説・文学


※よろしかったら最初からどうぞ→あなたができるまで



娘よ。

わたしはたとえば、本棚にある本の巻数が順番になっていないといやだとか、そういうとくに必要のない部分はカンペキ主義なところがあるけれど。

英会話に関しては、非常に不完全主義でね。

ニュージーランドでの9ヶ月間の生活でも、いかにも英語がわかってるよ、というような顔で、

「イヤ~、ザッツファニー」

とか相づちを打っておくとたいていのことはまかなえた(ように思えた)ので、進歩ということが著しくなかった。

しかし、アリススプリングスで気球に乗ろうという話になったとき。

そんな自分をのろったね。

英会話に関しての101回目の後悔って感じだった。

後悔ばっかりかよ!

その通りだよ!

だって英語が上達するのって、努力と恥と忍耐と度胸が必要。

そしてそれらはわたしにとって、いちばん苦手な分野だった。

わたしの得意な分野?

批判 と 見当違いの賞賛。

案外、これでも人生乗り切れてきた。

ところが英語圏では、批判するのも賞賛するのも、オールイングリッシュ。

いきおい、無口になったよ。

しかちくは日本語よりも英語のほうがむしろ饒舌になるという不思議なおとこ。

そんな人がとなりにいるもんだから、わたしは借りてきたイグアナみたいにおとなしくしてればよかった。

朝5時。

当然、オーストラリアでも朝5時は暗い。

その暗さがわたしをダメ人間方面に引きずり込む。

あ~、いやや~、朝から気球なんか、乗らんでもええ~。

と激しく思ったけど。

いややとか言うと、またしかちくに怒られると思い、口には出さなかった。

自分で読んでてもあきれるくらい、ヘタレ人間だよ。

将来あなたが読んだとき、ためになるとはとても思えない。

でも、ドンマイ。

ドライバーのおじさんは朝からテンション高くいろいろ話しかけてくる。

しかちくが適当に返してくれてるので、わたしはお得意の、

「イヤ~、ザッツファニー」

と頷くだけでよかった。

でもなにも説明は聞いていなかったから、いちいちビックリした。

まず、ひろ~い大地に集まった乗客20名ほどが、みずから気球を広げて準備しなければならないということ。

金払って労働かい!

というオッサン的セコイ考えを持った人はわたしくらいしか見当たらなかった。

みんなせっせと気球設営に尽力している。

普段いかにもグータラしてますというふうな若いアメリカ人らしき男も、張り切って手伝い中。

ひざが悪くてねえ、とぼやきそうなおばあさんまでがんばっている。

わたしの『妊娠中』という錦の御旗はあんまり通用しなさそうだったので、わたしもしぶしぶ手伝った。

気球は、わたしにとって信用できない乗り物の上位に位置してたけど、乗ってみると、違った。

揺れもなく、静かに上昇し、安定もあり、思ったよりも高いところまでいけた。


あなたができるまで17 1・10



気球から下を見ると、カンガルーが走ってるのが見えて、あらためてオーストラリア!って思った。

地平線と隣り合わせの空は、徐々に群青色から紫っぽくなって、しだいに白みを帯びていきなりオレンジ色がやってくる。

同じ気球に乗ってる乗客が話しかけてきたので、わたしは、

「イヤ~、ザッツファニー」

と相づちをうった。

あんまり聞こえないように言った。

これはずるいんじゃなくて、知恵なんだよ。

空の色がすごいよね、という顔さえしてればいいんだ。

とにかく日の出がすごいので、言葉がいらない瞬間だったからね。

気球には30分か40分くらいも乗ってただろうか。

来たのとは違うところに着陸した。

何の説明も聞いていないわたしは、それもまたオドロキで、その後、気球を片付けるのを手伝うというのにも、いちいちビックリした。

また金払って労働かよ!と思った。

そしてそんなことを思ってるのはわたしひとりっぽかった。

さらに驚いたことに、着陸地点では、いつのまにか食事の用意がされてあった。

おー!

これよ、こういうサプライズ!

わたしは激しく喜んだ。

聞き逃してただけに、喜びもひとしおだった。

長いテーブルには、白いテーブルクロスがひかれ、その上にパンやハムや卵料理やコーヒーなど、うれしい朝ごはんがぎっしり並んでいる。

笑顔がこぼれたよ。

しかしね。

英語圏のひとびとというのは、食事中になにやら気の利いた会話、というものをしようとする。

その日初めて会ったひとと、笑顔で談笑。

「イヤ~、ザッツファニー」

だけで乗り切ろうとしたわたしはひきつった。

見ていると、グータラアメリカ人男性が、わりとそつない会話でまわりを笑顔にしている。

そして彼の恋人は日本人と思しき女性。

この人は顔が思いっきり日本人なのに、すごく上手に英語を話し、そのうえ、わりとお調子者キャラまでかもしだしている。

同じ日本人として誇らしいどころか、あんたのおかげでこっちはハードルあがっちゃって大変だよ、とぼやきたかった。

現に、わたしの目の前に座ったおばさんが、何か話したそうにしていたよ。

あの日本人があれだけ話せるのだから、あんたもそうだろうと言いたげな目つき。

わたしたちが黒人を見て、みんなダンスうまいだろう、と思ってしまうのと同じ目つきだった。

食事の間じゅう、話をしようか、しまいか、そんなことばっかり考えてるので、せっかくの朝ごはんがぜんぜん楽しめなかった。

お互い、なが~い逡巡のあと。

おばさんのほうから話しかけてきた。

「気球に乗ったの、はじめて?」

「イヤ~、ザッツファニー」



そして会話は終わった。



気球に乗った思い出はいつもこのこととセットだ。

ちょっと『切なさけない』よ。



つづく

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