2011年01月28日ショートショート とりぶうの読むコント~宮古島  スポンサーサイト陣痛・・・!?~あなたができるまで 31 


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陣痛・・・!?~あなたができるまで 31

テーマ : エッセイ ジャンル : 小説・文学


※よろしかったら最初からどうぞ→あなたができるまで



娘よ。

かゆみとたたかいながらも、時間はこくこくと過ぎる。

おなかはますます大きくなり、外からでもあなたの足がわかるくらいになった。

妊婦というのは不思議な存在で。

わりと若い女のはずなのに、みんなにおなかをさわられる。

男性でも女性でも。

「さわってもいい?」

と聞く人もいるけど、いきなり、

「わ~、おおきい~」

とさわる人もいた。

もし、男性が妊娠してない若い女性のおなかをさわろうもんなら、

きゃー、なにすんねん!

どころではすまなくなる。

そう考えると、妊婦というのは女性だけど、ちょっと動物みたいだと思った。


あなたができるまで31 1・28




たまに、おなかが張ることもあって、そんなときは、

「陣痛か!?」

とビクビクした。

このころのわたしのいちばんの不安は、

『陣痛がわからなかったらどうしよう?』

ということで。

陣痛に気付かずに過ごし、なんじゃこりゃ~と言ってるうちに、あなたが出てきたらどうしよう、と思っていた。

それはそれで楽に産めていいじゃないか、と今なら思うんだけど。

後片付けをする人の身になってみると、それは避けたほうがいいと思った。

そんなことを助産婦さんに言うと、

「そんなあほな。わからんわけがない」

と一笑された。

たしかに、テレビドラマなどでは、陣痛がやってくると、悲壮感たっぷりの顔で、

「陣痛がきたわ!」

とやってる。

そうしてうんうんうなりながら子どもを産んでいる。

そんなドラマみたいなことが自分の身に起こるということが、なかなか信じられなかった。



店は日曜日だけがお休みだったので、しかちくとふたりで出かけた。

「ふたりだけで出かけるのはきっと最後」

を あいことばに、明石海峡大橋や宝塚ファミリーランドなんかに行った。

途中でおなかが張ってくると、

「陣痛か!?明石海峡大橋で出産か!?」

とビクビクしたけれども、ビクビクしながらもこれくらいの痛さじゃないはず、とどこかで思う自分がいて。

いつもそのとおりだった。


出産予定日は12月18日で。

12月13日の日曜日にも、「ふたりででかけるのは最後」をあいことばに出かけた。

助産婦さんからはいつ産まれてもおかしくない、と言われてたので、遠出はできなかったけど。

渋滞に巻き込まれてしまい、

「ここで陣痛始まったらいややなあ」

と考えていた。

さいわい、なにもなくてよかった。

近所にも、娘が妊娠中でという奥さんがいて。

その娘さんはなにやら安静にする必要があるとかで、妊娠8ヶ月くらいからずっと入院していたらしく。

わたしを見るたび、

「おたくはええわあ。ほんま、お元気でええわあ」

と声をかけてくれた。

12月14日。

そんな元気なわたしだから。

出産予定日を4日後に控えた日でも店に出て、店の外のそうじをしていた。

すると、自転車に乗った知人の女性が現れ、

「あらっ・・・・!」

と言葉を失った。

女性は大きな箱包みを持っていて、

「ごめん、もう産まれたもんやとばっかり思ってたから・・・」

とバツの悪そうな顔をした。

「おなかの中が居心地ええみたいですわ」

と言って、お互い苦笑いした。


しかちくとそのことを笑い話にしながら、

「あと10日もってくれたら、クリスマスやけどな」

なんて言いあった。

けど。

その夜、ふだんのおなかの張りとはあきらかに違う強い痛みがやってきた。

おなかのなかが地殻変動してるみたいに、骨盤がぎしぎし広がり悲鳴をあげていた。

「陣痛かもしれん」

わたしは痛みに耐えながら、言った。

ドラマのように悲壮感たっぷりだったと思う。

しかちくはひたすら冷静になろうとしていた。

背中をさすってくれて、がんばれと声をかけてくれた。

と、思う。

実は痛みに耐えるのに必死だったので覚えていない。

しばらくすると、それはおさまった。

おさまるとウソみたいに普通に会話もできた。

1時間くらいなにもなかったので、陣痛じゃないのかと思ったけど。

またやってきた。

おさまってはやってくるの繰り返しで。

それが陣痛であるのは、もはや間違いなかった。

陣痛というのは、何段階にもわたって、あなたがわたしから出てゆこうとしている、サインなんだと思った。

痛いけど、耐えられるのは。

小さい小さいあなたが、初めて見せる感情が。

生きたいという意志が。

伝わってくるからだ。

いっしょにがんばろうよ、と思った。

そうして。

痛みに耐えながらわたしは。

「ほんまに、陣痛はわかるわ・・・」

と妙にナットクしていた。



つづく

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