2011年02月01日ショートショート とりぶうの読むコント~宮古島  分娩台へ~あなたができるまで 33 


分娩台へ~あなたができるまで 33

テーマ : エッセイ ジャンル : 小説・文学


※よろしかったら最初からどうぞ→あなたができるまで



娘よ。

里帰り出産する人も多いけど わたしはそうしなかった。

同居なので家事やその他の心配がないというのもあったけど。

いちばんの理由は。

これを書いたら怒られるかもしれないけど。

しかちくがさみしがったからなんだ。

わたちたちは24時間いっしょにいて、それが当たり前で。

離れ離れになることは、おたがいとても心細く感じた。

いくら、陣痛の痛みに耐えてる妻をくだらないことで笑わかそうとする人であっても。

しかちくがいない世界は わたしにとって意味のない世界だ。

だから、わたしは常に念じた。

不安に負けたらあかん。

常識に負けたらあかん。

ハプニングがあったら、対応できる能力がある と信じる。

そんな心構えで助産院に行く車に乗っていた。


助産院にはお義母さんもいっしょに行ってくれた。

到着すると助産婦さんと看護婦さんが迎えてくれ、さっそくわたしは分娩台に乗せられた。



あなたができるまで33 2・1




いやおうなしに、しかちくもお義母さんも分娩室に入れられる。

ドラマみたいに、病室の外で、

「まだかなー、まだかなー、ちょっと遅すぎるんじゃないか」

と夫が心配したり。

それを見て、

「まあ落ち着きなさいな。初めてのお産っていうのは時間がかかるものなのよ。

あなたを産むときなんか、母さん24時間かかったんだから」

なんて義母がなだめたり。

そういう展開はいっさいなく。

助産婦さんが、

「ちょっとダンナ、ここ手伝って!お義母さん、こっち持って!」

と人づかいが荒いのなんの。

ヘタしたら、外歩いてる人までつかまえてきて手伝わせかねない勢いだった。

夜中でよかった。

陣痛は絶え間なくやってきて、分娩台の上でわたしは、もうすぐだと腹をくくった。

不安に負けたらあかん!

しかし。

助産婦さんは触診で、

「子宮口、8センチやな。10センチにならないと産まれへんから、あと2時間くらいかかるわ」

と言った。

えー!

こんなしんどいのあと2時間!?

ムリムリー!

わたしはさっそく負けそうになった。

人によるとほんとに24時間くらいかかるというのだから、わたしはまだマシなほうなんだろうけど。

強烈にはちきれそうで、締め付けられるような痛み。

ほんとにスイカが体から無理やり出て行きそうな、めりめりめり という痛み。

これが2時間も続くのかと思うと、気が遠くなりそうだった。

骨盤が、がくんがくんいう痛みのなか、わたしは夢中でヒッヒッフーをくり返した。



気がつくと、その助産院の先代、つまり、助産婦さんのお義母さんにあたる人まで総動員されていた。

もう80歳を越えてるだろうと思われる先代は、達観した顔つきで、

「そうやでー、そうやでー、その調子やでー」

とわたしの腕をさすってくれた。

おなか周辺はとても暑いんだけど、足先や指先がものすごく冷たく。

わたしは

「寒い寒い寒い」

と言い続けた。

しかちくはわたしの横で、さすがに真剣な顔をして、

「がんばれ、がんばれ」

と励ましてくれ、いっしょに『ヒッヒッフーッ』を言ってくれた。

思ったよりわたしの子宮口は開くのが早く、ついに10センチになった。

それくらいでもまだあなたは動いていたよ。

もう陣痛の間隔は1分くらいで、常に痛い状態。

早く出てほしいという一心だった。

「いきんで!ヒッヒッフーッ、ウンッや!」

助産婦さんの声が飛ぶ。

わたしは言ったよ。

「ヒッヒッフーッ、ウンッ!ヒッヒッフーッ、ウンツ!」

こうなったらウンッだろうが、フンだろうが、なんでも言ってやるよ!

キューティーハニーのコスプレだろうがやってやるよ!

とにかく、早く出てきて!

必死だった。

わたしがいきんでる横で、しかちくが。

『ウンッ』のときにかすかに笑ってるのがわかった。

うぬぬぬ。

でも笑いながら『ウンッ』をいっしょに言ってくれた。

唇はヒッヒッフーッのたびに乾いて乾いて。

しかちくにリップを塗ってもらいながらいきみ続けた。

「ほら、もっとしっかりいきんで!」

助産婦さんは叱咤する。

しかしこれ以上いきむと、いろんなものが出てきそうでこわかった。

病院ではあらかじめ浣腸をするところもあるそうだけど。

この助産院ではそういうことはまったくなく自然にまかせていたので、

わたしは いきみたいけどいきめないジレンマに陥っていた。

「ほら、いきまんかいな!

なんでも出したらええ!

おもいっきり出したらええ!」

助産婦さんの言葉に背中を押されて、わたしは、

もうこうなったら、常識に負けたらあかん!と腹をくくり、

ふんーーーーーっ

ふんーーーーーっ

ふんーーーーーっ

といきんだ。

すると、

「見えた!」

というではないか!

すかさず、わたしはどっちが!?と思った。

「頭が見えた!」

という声を聞いて、心底、ほっとした。



つづく
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