2011年04月06日ショートショート とりぶうの読むコント~宮古島  ミシン 


ミシン

テーマ : 日記 ジャンル : 日記


みなさんこんにちは。

好きこそものの上手なれ と 下手の横好き と

まったくちがった意味合いのふたつのことわざがありますが。

わたしは完全に下手の横好き派。

上達ということをあんまり考えたことがありません。

たとえば、わたしの裁縫の腕は中学時代からまったく上がっておらず、春の雑巾シーズン(?)になるたび、『下手の横好き』ということわざを思い出すのです。

わたしは相当下手くそながらも、実は裁縫がわりと好きで、なかでも雑巾を縫うのが好きです。




下手の横好き 2011 4・6





ファスナーをつけるだとか、まつり縫いをするだとか、ボタンホールがどうだとか、そんなややこしいことをいっさい考えず、ただやみくもに直線に縫ってゆくと自然と出来上がるというこのシンプルなしくみ。

この無心になれる感覚がいい。

雑巾縫い最高!

と思えてなりません。

ところが縫い方ときたらこれまたいい加減のきわみ。

わたしのやり方は速いが荒い、荒いし下手くそ。

自分が依頼主だったら、ぜったい仕事を任せたくないタイプの職人です。

でも不思議と向上心のかけらもおこりません。

そんなわたしでもあるとき。

ミシンを買おうと思ったことがありました。

娘が保育園にあがるとき。

手提げ袋やらきんちゃく袋やらいろんなものを作る必要があったからです。

ミシンといえば、わたしの子どものころは一家に一台。

ある時期にはテレビよりも普及率が高かったんじゃないかと思われる必需品でした。

現にわたしの家にも二台ありました。

おばあちゃんが使ってた足踏みミシンと、母の使ってた電動ミシン。

嫁というのはミシンが使えてナンボ。

そんな幻想を十分に抱かせる環境で育ったわたしは、ミシンが使えることは女として最低条件のことなのだと信じていました。

おまけにわたしの母は洋服の仕立ての仕事をしていたため、自然と裁縫に触れる機会も多かったのです。

しかしわたしのミシンの腕は、がっかりするくらい上がらず。

下糸と上糸の調節をすることで1時間まるまるかかるという具合。

中学や高校の家庭科ではミシンが嫌いで嫌いでしょうがなかったのでした。

さて。

ミシンを買おうと思ったわたしは、安売りミシンというチラシを見つけ、さっそく電話しました。

チラシには1万円以内できちんとしたミシンが手に入るという触れ込み。

そのうえ出張で使い方も教えてくれるというではありませんか。

わたしは申し込んでミシンの到着を待ちました。

やってきたのは50がらみの男女、ふたりぐみ。

男性は場末のポン引きのようないでたち。

女性はスナックのママを長くやってるというような素人ばなれした迫力。

ミシンを売りにきたとはとても思えず、年寄りにバカ高いつぼを売りつけにきたようなコンビでした。

『ミシン=家庭的』

とか

『あたたかみのある手縫い』

とかいうイメージとこれほど遠いところにある人がミシンを売るなんて。

『違和感』ということばがわたしの頭の中をぎっしり埋めました。

男性がミシンを運ぶ役目で、女性が教える役目。

ことばのはしばしに「おたく、こんな安いミシン買うの?」というちょっとバカにしたにおいが感じられます。

わたしの頭の中の『違和感』はだんだん『不信感』に変わりつつありました。

ミシンを設置したポン引き男性は、少し離れたところでにやにや笑いながら見学。

スナックのママ的女性が、ものすごく手早く糸を通しながら言います。

「ここに糸を通してここから出す。下糸の調子合わせるのはわたしらでも難しいよ。ミシン使ったことあるの?」

「いえ、ほとんど」

「うわー、それやったら無理かなあ。一応、やりかた説明するけどね」

ママは厚化粧の口元を意地悪そうにゆがめて笑い、わたしに一度糸通しをやってみろと席をゆずります。

わたしが案の定もたついていると、

「ほんまにこのミシンでいいの?これはかなり使える人でも難しいんやで」

と女性がため息をつきます。

するとにやついていたポン引きが、

「このチラシにあるこれは素人でも十分使えるよ。糸通しがほんまに楽やしね」

とチラシを見せます。

そこには20万という値段のついた最新式のミシンがありました。

ははーん。

わたしの頭の『不信感』は『不快感』に姿を変えました。

こうやって安いミシンをサカナに、いかにこの安物が使えないかを見せつけて、バカ高いミシンを売りつけようというのだな。

わたしが不快感いっぱいで彼らを見ていると、彼らは待ってましたとばかりに最新式のミシンがいかに使いやすくて、買うべきシロモノかということを語り始めました。

ママは、

「わたしも一台持ってるけど、これはほんま、ええよ。こんな刺繍もミシンが勝手にやってくれるから」

とパンフレットの刺繍を見せます。

複雑怪奇なバラの刺繍。

そんな刺繍、出来てもいらん。

わたしはひたすら はぐらかすことに心を砕いていました。

彼らはさんざんねばっていましたが、わたしもねばって、

「やっぱり考え直します」

というと、ポン引きとママは顔を見合わせて、

「この安いほうでも使えるけどね」

と最後っ屁のようなことを言いました。

なんやそれ。

あれだけ使いにくいと主張しといて。

わたしはあきれて苦笑いするしかありませんでした。

彼らはわたしが買う気がないとわかると、聞こえるくらいの大きなため息をついて出て行きました。

彼らの口元は『来て損したな』と動いていました。

それ以来。

わたしのミシン熱はすっかりさめて、手提げ袋が必要なときは、姉か妹にお願いして縫ってもらっています。

なぜか彼女たちは家庭科の教員免許を持つくらいミシンが得意で、同じ環境に育っても得意なものはまったく違うのだなといつも思います。

そうして。

わたしは『ミシン』ということばを自分の辞書から消したのでした。

不完全な嫁でもええやないか、と最近では開き直っています。


それでは~


とりぶう


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