少女の日の思い出ショートショート とりぶうの読むコント~宮古島  少女の日の思い出 


少女の日の思い出

テーマ : 日記 ジャンル : 日記




みなさんこんにちは。

中学1年の国語の教科書には、なんと60年もの間、
ヘルマン・ヘッセの『少年の日の思い出』が載ってるのだとか。

となりの家の非の打ち所のない少年、エーミールのクジャクヤママユを盗んでつぶしちまったよという話。




クジャクヤママユ 2013 4・11




そろそろ主人公は盗みをやめたのかと思いきや。
何回読み返しても、主人公はクジャクヤママユ盗んでるし。(当たり前)

60年もの間受け継がれてるところを見ると、ほとんどの日本人がこの話を共有してるということになります。

もう桃太郎とか浦島太郎レベル。

しかし。
ドイツ人が書いたこの話。
当のドイツではほとんど知られてないって。
このお話が有名なのは日本だけだって。

びっくりー。

日本では「クジャク」といえば「ヤママユ」と合言葉になるくらい有名なのにねー。

うそです。
すいません。

そんな合言葉を使ってる人は、蛾フェチに違いない。
そして蛾フェチというのは、クジャクヤママユよりも珍しい存在に違いない。

さて、このお話のあらすじは冒頭で少しふれたように、思わず盗みを働いた少年の気持ちを中心に描かれているのですが。
盗みをしたらいけないという単純なメッセージを持った話ではありません。

わたしにとっては、いったんやっちまったことに対しては、いつまでも苦い味を引きずっていかなければならないというメッセージに思えるのです。

じつは、わたしにも苦い思い出があります。
少女の日の思い出。

ちょっと長くなりますが、お付き合いください。

あれは小学校5年生のとき。
当時、わたしは自分のことを優等生として見せることに心を砕いていました。
賞賛、名誉、
そんなものを得るために積極的に発言し行動するという、イヤなガキだったのです。

あるとき。
社会科のワークブックのシールを紛失してしまいました。
自分のせいでなくしたのか、最初から入ってなかったのかは忘れてしまいましたが、
ともかく、シールがないというのは、わたしにとって一大事でした。

なぜなら社会の先生はちょっとめんどくさい中年の男の先生。
優等生とか問題児とか関係なく、無駄な行動には容赦なく突っ込むという小学校の先生にしては珍しいタイプでした。
むしろ優等生と思われる生徒に対して、やり込めるのが好きと見受けられました。
生意気なガキが嫌い。
そんなふつうのオトナだったのかもしれません。

だからこそ、先生にシールをなくしたと伝えるのがおそろしかったのです。
わたしの過失でなくてもきっと先生は、
「なかったらどうしたらいいと思いますか?」
と意地悪に聞いてくるに違いない。
言外に、
「優等生ヅラしてても、抜けとるな」
と匂わせてくるに違いない。
そんなやりとりが、わたしには屈辱に思えたのでした。

ワークブックのシールを使う日がせまってきて、わたしは毎日憂鬱でした。
いろんなところを何度探してもシールは見つからない。
大判のため机に収まらず、ロッカーに入れているみんなのワークブックを見ては、ため息をつくのでした。

そのうち、わたしの中に、ある思いが芽生えました。
みんなのロッカーに入れられたワークブック。
だれが触ってもわからない。
ということは、だれかのシールをいただいても、わからない。

すぐさま「そんなことはできない」と思いました。
しかし、いったんその可能性を見つけると、もうとまりません。
頭の中では、だれのシールをいただこうか、という思いに変わってきたのです。

わたしは、どちらかというと問題児のNちゃんのワークブックに目をつけました。
Nちゃんはそれほど仲良しではないし、いつもなくし物をしている。
Nちゃんなら、みんな納得する。

わたしの心はすでに悪魔が牛耳っていました。

決行の朝。
わたしはだれよりも先に学校に着きました。
Nちゃんのロッカーに近づきワークブックを手に取りました。
体全体が心臓になったようにドキドキし、頭のてっぺんまで血がかけめぐるのがわかりました。
シールはすぐに見つかり、わたしはそっと手に取り、細心の注意を払って、もとあったとおりにNちゃんのワークブックを戻しました。
すぐに自分のロッカーのワークブックを開き、シールを挟み込みました。
盗み、成功。
わたしは大きく息をはきました。
だれにも見つからずやりとげたことに安堵していました。

そうして社会の時間。
ワークブックを使うことになりました。
先生の号令で、みんな席を立ち、ロッカーにワークブックを取りに行きます。
わたしは足がもつれんばかりに緊張していました。
勉強が得意ではないNちゃんは、いつもうつむきかげんなのですが、
その日も相変わらずうつむき加減で、のろのろと歩いていました。
その瞬間、わたしは泣きたくなりました。
もうすぐNちゃんはわたしのせいで先生に怒られる。
ごめん、Nちゃん、ごめん、Nちゃん
わたしは、そのとき初めて自分がやったことを激しく後悔しました。
Nちゃんだって怒られるのはイヤに決まってる。
そんな簡単なことが、ようやくわかったのです。

ワークブックを手に席に着くと、先生は、
「今日はこのシールを使います」
とシールを手にひらひら示しています。
わたしは罪悪感いっぱいながらも、さもずっと前から挟まっていたかのようにシールを取り出しました。
先生はシールを使っての作業を指示したあと、それぞれの机を見回ります。

わたしはいちばん端の席にいるNちゃんの様子をうかがいながら作業をしていました。
Nちゃんはわたしの席からでは顔がよく見えないのですが、あきらかに首をかしげています。
ひらひらと何度もワークブックのページをめくっています。
Nちゃんは引っ込み思案なため、なかなかシールがないとは言い出せないようでした。

先生がNちゃんの席に回ってきました。
わたしはもう自分の作業も忘れてそちらばっかり見ていました。
先生はもうすぐ大きめの声でNちゃんを責めるだろう。
するとみんなそっちを注目する。
Nちゃんの出来てなさがまたみんなの記憶に残るに違いない。
Nちゃんには何も罪はないのに、Nちゃんがなくし物が多いというだけで罪をなすりつけられてる。
わたしの頭には、怒られてうなだれているNちゃんが浮かび、きりきりと体の中が締め付けられる思いでした。

先生はNちゃんになにかしら聞いたあと、自分のシールをNちゃんに差し出しました。
Nちゃんは小さく頭をさげてお礼を言ったようでした。
そうして先生はそのままNちゃんのもとを離れました。
わたしはとてもほっとしたのですが、きっと先生はいやみったらしく怒るだろうと思っていたのが、まったく違ったので、なにかすわりの悪い思いでした。

この出来事はそれ以来、何度も思い出しました。
正直者でない、ずるい人間。
わたしは一貫して自分のことをこう思っています。
いまさらNちゃんにざんげのしようもなく、あのときの自分を止められることはないのですが、
わたしはあれから30年たった今でも、自分のやったことが罪だったと意識しながら生きています。
優等生ヅラしようと思ってやってしまった恥ずかしい出来事。
ものの大小ではなく、自分の保身のためにだれかを犠牲にすることは、とてつもない悪徳だ。

このことによってわたしは、盗みが悪いということがわかったのではなく、盗みが悪いのは当たり前のことだけど、自分が悪いと思っていることをすると、自分自身を苦しめるということがわかったのでした。
そして1回でも悪いことをしてしまったら、それはずっと後悔とともに自分で背負ってゆかなければならない。
だれにも転嫁できない。
それがわかった少女の日の思い出でした。

暗い話にながながとおつきあいいただきありがとうございました。

それでは~


とりぶう


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No title

うーーん、
重い話です。
胸にずしんと来ました。

過去の事でもキョウクン?

本当に懺悔の気持ちに潔さを感じました。

先生が

怒らないでくれて良かったですね!


こんなに気がついたのだから、
その時のとりぶう少女を今のとりぶうさんは
「もう苦しまなくていいんだよ。あなたの気持ちはよくわかってるよ。」
と声に出して言ってあげて許してあげて下さいね。

ふくろうさん。

コメントしにくい話にコメントいただきありがとうございます~
このことはわたしの隠したい出来事ですが、
忘れてはならないことだとも思ってます。

案山子さん。

いつまでたってもその苦さは薄まることがないですね。
だからこそ、二度と同じことはしないようにしなければ、と思っています。

ルーままさん。

やさしいおことば、ありがとうございます~

わたしはその先生に一度怒られたことがあったので、恐怖感があったんです。
それがちょっと屈辱的な感じだったので、二度とあんな思いはしたくないとおもったのですね。
でもうわべだけの優等生なんて、オトナからしたらすぐにわかりますよね。
恥ずかしい過去をさらけ出せてよかったです。
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