髪の悩み
作品No.(10)
仕事がえり、ホンダ課長に、
「マツダくん、今日、ちょっといいかな?」
と飲みに誘われた。
サラリーマンであふれる、駅前の居酒屋にいった。
「ちょっと、マツダくんに、聞きたいことがあってさあ。」
ホンダ課長は、小さめの声で言った。
「はあ、なんでしょう。」
「きみね、マツダくん。ショクモウしてる?」
「は?ショクモウ?」
「植える毛の、植毛、だよ。」
「ああ、あれ。」
「してんの?」
「植毛、とはちょっと、ちがうんですけど・・・。」
「なんだ、やっぱなんか、やってんじゃん。
最近、みょーうに、自然な増え方してんなあ、って、思ってたんだよね。
なに、なに、なにやってんの?」
「じつは、『ヒッツケムシ』やってるんです。」
「は?なに?ヒッツキムシ?」
「ヒッツ、ケ、ムシ、です。」
「なんだよ、それ、育毛剤?」
「毛虫ですよ。」
「ええっ、きみ、毛虫、あたまにつけてんの!」
「ちょっと、大きな声出さないでくださいよ。
毛虫っていっても、厳密には、ミノムシのなかまなんですよ。」
「きもちわるいなあ、どっちにしても。」
「だいじょうぶですよ。ムシは見えませんから。」
「で、どうやって、つけんの?」
「まあ、ようするに、毛を、みのがわりにさせるわけです。」
「自分の毛を?」
「最終的には、そうです。さいしょは、
人工の毛をみのがわりにした、ヒッツケムシを、
あたまに付着させるんです。」
「どうやって?」
「かんたんですよ。ひとばん、ヒッツケムシをいれた、
ナイトキャップをかぶって寝るんです。
そうすると、やつらは僕の毛を、人工の毛といっしょに
みの にしてしまうんです。
あとは、あたまを洗っても落ちないし、
とっても手入れはかんたんですよ。」
ホンダ課長は、僕の頭をじっと見つめた。


あしたも、お待ちしております。!


