スパルタシーカヤック ~沸く沸く、沸いてる!八重山 (5)ショートショート とりぶうの読むコント~宮古島  スパルタシーカヤック ~沸く沸く、沸いてる!八重山 (5) 


スパルタシーカヤック ~沸く沸く、沸いてる!八重山 (5)

テーマ : 日記 ジャンル : 日記



みなさんこんにちは。

「沸く沸く、沸いてる!八重山」のメインイベントであるアドベンチャーツアー、いよいよ開始である。
メンバーは隊長(ガイドさん)、ゆるコバ(ゆる~いケンコバみたいな男の人)、しかちく、わたし、の4人。
最初のアドベンチャーはシーカヤック。
シーカヤックというのは、細いボートみたいなもの。
隊長とゆるコバは一人乗り、わたしたち夫婦は二人乗りのカヤックでゆく。

そのカヤックは隊長いわく、
「ほんとうのシーカヤック」
なのだそう。
そういわれてみると、なるほど、なんだか立派である。
カヤックの先端も、まるでひとむかし前のヤンキーのエナメル靴のようにとがっている。
しかし、本物でないのはどんなやつか?と聞かれたら、説明できる自信はさほどないのだけど。
本物ではないやつは、商品名が『シーカヤック』なのだそうで、うまいことを考えるひとがいるものだと隊長は笑っていた。

さて、そのシ-カヤックは足で左右の方向を決める式のもの。
二人乗りの場合は、後ろに乗った人がそのペダルを担当。
10対1で、後ろが難しいという。
わたしたちは紆余曲折もなにもなく、すんなりしかちくがペダル担当となった。

隊長が、
「シーカヤックに乗ったことは?」
と聞くので、
「2、3回あります」
と答えたところ。
それなら大丈夫だとばかりに、すぐにカヤックツアーは始まった。

ちょっとびっくりした。
というのも。
わたしたちがいつもジョギングする海沿いコースの途中に、シーカヤックをやってる店がある。
そこのオニイさんはやたらとスパルタなのだ。
最初はビーチでしっかりとオールの使い方の練習。
それが終わったら海に出るのだが、海に出たら、
「もっと右!」
「行き過ぎ!」
「左!」
「あー、ダメダメ!ダメだよっ!」
としきりに声が飛ぶ。
わたしはそれを聞きながら、
「お金払って怒られるってなあ・・・」
と気の毒に思っていたのだ。
しまいには、
「あー、そこで待ってて!ちょっと動かないで!」
とドクターストップならぬオニイさんストップがかかったりして、
心の中でひそかに「戸塚シーカヤックスクール」と呼んでたのだけど。

そんなシーカヤックツアーだったらどうしよう?
わたしは2、3回乗ったことがあるとはいえ、おせじにもうまいとはいえない。
ひょっとしたらあのオニイさんのように、「あー、ダメだよっ!」と怒られるかもしれん、と思っていたのだけど。
まったくそんなことはなく。
ないどころか、そのツアーはそこらへんが非常にざっくりとしてて、とにかくやってるうちに漕げるようになるさ、みたいなほっとかれる感じがとってもよかった。





いざ、シーカヤック 001




その日は数年に一度というくらいの状態の良さなので、いつも行けないところまで行くという。
「うわー!」
とは思うものの。
「でもそれって、難しいんでしょ?」
という気持ちがむくむくとわいてくるのであった。
通販番組で、
「でもその育毛剤、お高いんでしょ?」
と疑念をいだくような感じ。
通販番組なら「いえいえ、今なら3本で6980円!」みたいに、まるで高くない感をかもしだされるのであるが。

そのコースは、
「細~いところを通りますんで、かなり難しいです!」
と隊長はハキハキとおっしゃるのだった。
「まじかよ~」
とわたしは思うのであったが。
うしろにしかちくを乗せているしな。(ほぼ自分が乗せてもらってるくせに)
それにあのゆるコバだってがんばってるしな。(どこから目線よ?)
そう思うことでどうにか平静を保つのであった。

シーカヤックは最初、広いところをゆく。
まだこのあたりは余裕である。
隊長の話をちゃんと聞けるくらい、余裕があった。
隊長の西表島に関する話は面白く、へ~、ほ~、とうなずくことしきりだった。
西表島ではいまだに不思議な祭りが残っていて、それはそれは面白い話だったのだけど。
書くのがちょっとめんどくさいという、諸般の事情により割愛します。(サボってるだけやん)

さていよいよ、難所に到着。
ここはマングローブが入り乱れて、細い上に迷路である。
隊長が、
「しっかりついてきてくださいね。でないと見失うんで」
と脅す。
わたしたちの気持ちは引き締まるしかないのだった。

マングローブの根っこが交差する細い水路を、隊長のカヤックはすいすい進む。
見ているだけならいとも簡単そうである。
わたしたちのカヤックが後に続いた。
とたんに根っこに引っかかる。
「しかちゃん、右、右!」
「いや、無理無理」
「いったんバック、バック!」
「えー、バック?」
「次、左!あー、行き過ぎた!」
簡単どころかまるで思うように進まない。

ここに来て、二人乗りの難点があらわになった。
わたしとしかちくでは、わたしのほうが座高が高い。
そのため、後ろで方向を操作するしかちくからは前が見えないのである。
「とりちゃんの背中しか見えへん」
という状態のしかちくを、わたしが導いてゆかねばならぬのだ。
プレッシャーである。
自慢じゃないが、わたしは右と左が非常にあやふやな人間。(ほんま自慢じゃないよ)
そんなわたしがこのカヤックの運命を背負っているのだ。

わたしは必死に頭をめぐらせ、ちょっと早めに指示を出すことにした。
「次、左!」
「思ったよりもぎゅ~っと曲がってる!」
「しだいに右!」
「違う、左!」
わたしはまるで戸塚シーカヤックスクールのオニイさんであった。
わたしの声だけを頼りに、しかちくは足を操作する。
しかし、なかなか連携はうまくいかない。
しょっちゅう引っ掛かるマングローブ。
そのたびにバックして、木の枝に頬を打たれる。

へとへとになって抜け出たら、ようやく隊長のカヤックが見えた。
しかし、わたしたちの姿を確認したらすぐに進む隊長。
「まだ行くんかい~」
とわたしは心の中で叫ぶのであった。
わたしのイメージでは。細い一本道のような水路を進むのだと思っていたのが。
迷路も迷路、大迷路である。
突き当りの連続に、すでに腕はパンパン、呼吸も荒くなってくる。
わき目もふらず必死にオールを漕ぐこと50分。
と、いいたいところだけど。
たぶん15分くらいだったように思う。
ようやく、広い川に出た。



亜熱帯の森 001




あーよかった。
胸をなでおろした。
隊長は、
「とにかくここを抜けたらだいたい漕ぎ方は覚えるんで。
体で覚えるのが一番なんですよ」
とおっしゃってた。
たしかにそれはいえる。
命の危険を感じて初めて人は真剣に頭を使うのだ。
わたしだって、ここにきて右と左をようやく覚えたのだ。(ようやく?)
隊長のやり方は、ある意味、戸塚シーカヤックスクールよりもスパルタといえた。

しかし二人乗りのカヤックは夫婦のきずなを試される乗り物である。
お互い味方なんだ、敵ではないんだ、
と思っておかなければ、容易にケンカになりそうだなと思った。
隊長いわく、
「ここはよくケンカになりますね。
このあいだも奥さんが、『あなたほんとにへたくそね!』て旦那さんにキレてましたよ」
とのことだったので。
このマングローブの難所をケンカせずにくぐりぬけたことが、なんだか誇らしく思えるのであった。
ひとえにわたしの指示の的確さのおかげであるな、と思った。(絶対ちがう)

広い川をひとしきり漕いで、元のところに向かう。
てっきりこのままどこかへいって、そこから沢登りするのだと思っていたわたしの思惑ははずれた。
それはまた別の場所だという。
何もスケジュールを把握していないわたしにとって、このアドベンチャーツアーは、まるで行先を告げられずに行くミステリ―ツアーでもあったのだった。

つづく


とりぶう

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