とびこめ! ~沸く沸く、沸いてる!八重山 (7)ショートショート とりぶうの読むコント~宮古島  とびこめ! ~沸く沸く、沸いてる!八重山 (7) 


とびこめ! ~沸く沸く、沸いてる!八重山 (7)

テーマ : 日記 ジャンル : 日記




みなさんこんにちは。

梅雨明けした沖縄、先島地方は冗談みたいに暑い。
いや、冗談じゃなく暑い!
暑い暑い暑い!
しかいうことがない。
こんな日は、ウォーキングすら苦行に思えるのだけど。
西表島キャニオニングツアーのときは、くもり。
暑すぎることもなく、ちょうどよかった。

次の出発点まで車ですこし走る。
途中、道にイリオモテヤマネコの標識があった。
レア極まる標識である。
これは観光客向けのSNS映えを狙ったものなのか?
と、思ったが、そうではなかった。
横にイリオモテヤマネコの事故件数が書かれた看板があった。
去年は3匹、今年は4匹ひかれて死亡してるらしい。
イリオモテヤマネコなんてめったに見られない特別天然記念物だと思ってたけど。
年に数匹は轢かれてるもよう。
なんとなく、イメージ的にはトキと同じで絶滅寸前なのかと勘違いしてた。
案外そんなこともないらしい。

車は出発地点の近くの駐車場に到着。
そこで必要な衣装が与えられる。
ウエットスーツの上下、ライフジャケット。
頭にはヘルメット、足元はすべりにくいフェルトブーツ。
そして腰には隊長が「おむつ」と呼ぶ尻あてのようなもの。
手にはグローブ。
もう満身創痍である。(けが人!?)
じゃなかった、完全装備である。
わたしはTシャツの上に長袖のラッシュガードを着こんでいたため、その上からウエットスーツにライフジャケットである。
正直、もごもごであった。
相撲取りの肉襦袢をつけてるような気になった。
窮屈だったのだけど、これから川に飛び込むと聞かされている身には、
「ライフジャケットがわたしを守ってくれる」
と思い、心強かった。

さていよいよ、キャニオニングツアー開始である。
隊長を先頭に、しかちく、わたし、ゆるコバが続く。
西表島のジャングルに潜入である。
いきなり道なき道をゆく隊長。
足元のごつごつした石が歩きにくいことこのうえなく、下手したら滑りそうなのだけど、フェルトブーツが優秀で、まったくすべらなかった。

のぼりの道が続く。
足を「えいや」とあげなければのぼりきれないようなところ。
しかちくに、
「とりちゃん、こういうのがやりたかったんやろ?」
と言われ、にわかにわたしの中で眠っていた紀の国のサルがうごめきだした。
「そうや、ワイは紀の国のサルや!」
そう思うと、のぼりの足が軽いこと。
後ろからくるゆるコバに、
「すごいですねー」
のひとことでも言わせてやりたいという欲すら出てくるのであった。
しかしそんなことは知らないゆるコバは、
「けっこうキツいっすね」
とか言うとる。
思わず、「ワイはキツないでー!」と豪語してやろうかとも思ったが。
わたしもけっこう息切れしていたので、説得力ないなと思いやめた。(全然あかんやん)

西表島のジャングルは亜熱帯の植物であふれている。
恐竜時代のイラストに出てくるような植物たち。
宮古島と似ているのだけど、ひとつひとつの木々が大きく感じられた。
しばらく歩くと、川の見えるところに出た。
川幅は5メートルくらいで、流れはそれほど急ではない。
しかし、岩だらけなのでそこを歩くのはなかなか骨が折れそうだった。
隊長が川に入る。
すいすい歩いてゆく隊長に遅れまいと急ぐわれわれ隊員。
隊長は途中、「すべりますよ」とか「気をつけて」とか、いっさい言わない。
すべっても転んでもそれがキャニオニングなのだ、そのために完全装備してきてるのだ、
とばかりにぐんぐん進む。
それはそれで心地よいほっとかれ感であり、大人の遊びはこうでなければ、と思うのであった。

すべりそうになりながら川の中を歩いてゆくと、ちょっとした滝のようなところに出た。
高さは5メートルくらいだろうか。
それでも水量は結構多く、ざばざば音を立てて落ちていた。
ひょっとして、この滝を飛べとかいうんじゃないだろうな。
わたしはいぶかった。
いやいやいや、それはあかんでしょ。
滝としてみればまるで高くない。
しかし、飛び込み場所としてみると、相当なこわさである。
どうかここを飛び込めとか言いませんように。
南無八幡大菩薩、日光の権現、どこそこの湯全大明神、
どうかどうか、隊長がここを飛べとは言いませんように。(那須与一か)

わたしの願いが大菩薩たちに伝わったのか。
飛び込む場所はここではなかった。
ほっと胸をなでおろしたのもつかの間。
その対岸の岩によじ登った隊長は、
「ここから飛び込みます」
というではないか。

ちょいちょいちょい、高い高い高い!
対岸のほうが低いとはいえ、それでも3、4メートルはある。
ちょっと、これ、みんなマジでやるつもり?と隊員たちの顔を見回すと。
飛び込み大好きしかちくは、ほくほくしている。
頼みの綱のゆるコバも、なにやら自前のカメラを用意しはじめている。
ゆるコバのくせにやる気である。(なんで上から目線よ)
顔がひきつっているのはわたしだけではないか。
紀の国のサル、大ピンチである。

隊長はお手本とばかりに、自撮り棒を手にし、(ツアー中の写真や動画はすべて隊長が撮ってくれている)
「こうやって、カメラに目線を向けて飛び込みます」
と言うやいなや、軽々、どぼん!と飛び込んだ。
見事なもので、ほとんど水しぶきもあがらない。
見ているぶんにはずいぶんと簡単そう。
しかし、実際にやるのはまるで別の話。
わたしは緊張してくるのを抑えられなかった。

まずしかちくが自撮り棒を手にする。
あんた、こんなときに笑顔なんて出る?
わたしがハラハラしていると、しかちくは見事な笑顔で、
「行きまーす!」
と飛び込んだ。

どぼん!

「おー!」
と声があがる。
しかちくは満足そうに笑いながら、
「気持ちええわー」
とかいってる。

「次どうぞー」
と隊長の声。
ゆるコバもいるものの、なんとなくここはわたしのほうが先に飛ばねばならない感じであった。
ゆるコバにええとこ見せたろか、という気持ちなどまったく沸いてこず。
紀の国のサル、とたんに意気消沈。
ああ、ついに来てしまった。
岩の上から見る川はだいぶ下にあるように感じる。

わたしは小学校の国語の教科書に乗っていた「とびこめ」という話を思い出した。
世界一周の船に乗っていた船長の息子が、サルに帽子を取られて、高いところまでのぼってしまい、降りるに降りられず、海に飛びこむしかなくなってしまった話。
飛び込まずに船に落ちたら即死である。
どうする、息子!?
というときに。
父親である船長が息子に向かって銃をむけ、
「とびこめ!」
と叫びながらカウントダウンをはじめる。
意を決して飛び込む息子。

ああ、あのときの息子もこんな心境だったのかもしれん。
わたしは深呼吸をした。
もし、ここで飛び込まんかったら死ぬって言われたらどうするん?
うしろからライオンがせまってきてるとしたらどうするん?
あるいは、人生終わるときに飛び込めへんかった自分を後悔せえへんか?
一瞬のうちにわたしはいろいろ考えた。

そして、もう一度深呼吸し、

「行きまーす!」

意を決してジャンプした。




とびこめ! 001





自撮り棒を見ている余裕もなく、
笑顔など出せる余裕もなく、
腹に力を入れて飛び込んだ。

瞬間、顔を風が切り、
次に体ごとぶしゅーっと水に入り込み、
鼻に水がずぶぶぶと侵入し、
ひとしきり水中に落ちた後、
わたしは顔を水面に出した。
水が顔に滴り落ちる。
それをぬぐいながら、

ああ、やってよかった、

としみじみ思った。
こわかったけど、やってよかった。

どうだどうだ、と言いたかった。
それはしかちくにでも、ゆるコバにでもなく。
ぐだぐだ悩んでた飛ぶ前の自分に言いたかった。


つづく


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