店と夢の間で~あなたができるまで 29ショートショート とりぶうの読むコント~宮古島  店と夢の間で~あなたができるまで 29 


店と夢の間で~あなたができるまで 29

テーマ : エッセイ ジャンル : 小説・文学


※よろしかったら最初からどうぞ→あなたができるまで



娘よ。

そのころしかちくは何をしていたかというと。

むしむし修行していた。

お義父さんのレストランは、しかちくが生まれる前からの常連さんもたくさんいて。

そういうひとたちをナットクさせるために毎日料理と格闘していた。

二代目というのはしんどいもので。

だれからも上から目線でみられる。

あからさまに、

「大学出てまでして店継ぐんだったら、行かんでもよかったんちゃうか」

などと言うおっさんもいた。

わたしはそういうのを聞くたび、くやしくてくやしくて、そのおっさんの鼻毛を全部引っこ抜いてやろうかと思ったのだけど。

しかちくは笑いながら軽口を返していた。

弱小野球部のピッチャーみたいに。

打たれて打たれて打たれまくった。

いつもそうだ。

しかちくは自分から打つことは、まずない。

打たせて打たせて、あなどらせて、なんやこいつなかなか倒れへんなと思わせ、それでも打たせて、こいつなかなかやりよるな、というところまできておもむろに、手綱を引きにかかる。

途方もなく時間がかかるけど、しかちくはこれがいちばんの人間操縦法だと確信していた。




空き時間には英語や数学の勉強もしていた。

そんなに勉強したら、やりすぎておつりがくるでと思ったけど。

しかちくは、人間操縦法と同じで。

途方もなく時間がかかるけど、勉強し続けることが夢への近道だと信じて疑わなかった。

頭が下がった。

わたしは下がった頭で、日本文化を吸収していた。

かっこよく言ったけどね。

マンガを読んで、テレビを見ていた。

わたしは楽な環境にはすぐに適応する能力には たけていた。



妊婦だけど健康体だったので、店も手伝った。

海千山千。

その形容詞がぴったりの常連さんが多く。

おもに年配の独身男性だった。

正直、怖かったよ。

中1が中3の教室に、単独で乗り込んでゆくような心境だった。

たまに、ヤクザまがいのお客さんや、ほんとのヤクザもいた。

いままで出会ったことのないタイプの人がたくさんいて。

人生勉強になった。

濃い大阪のテンションに戸惑うこともあったけど。

おおむね、みんなやさしかった。

そうして、そんな海千山千も。

みんなこぞって、あなたの誕生を心待ちにしていた。



はじめは不安なこともたくさんあった同居だけど。

結果的には、ほんとによかったと思っている。

お義父さんとお義母さんは、しきたりとかにはまったくうるさくなく。

やりたいようにやらせてくれた。

お義父さんはユニークなひとでね。

『ただ今満車』という駐車場の看板を見て、

「今だったら、車とめるんタダやて」

と純粋に驚いていたり。

『ラーめん』という看板を見て、

「『うーめん』ってどんなもんやろなあ」

と首をかしげたり。

『Office』(オフィス)というドアを指して、

「ここでコーヒー(coffee)飲もか」

と提案したり。

天然力にあふれた人だからね。

毎日、笑いが絶えなかった。




あなたができるまで29 1・26


いまでも。

わが家は笑いにあふれているけれども。

それは、お義父さんとお義母さんの努力のたまものだと思う。

真っ黒な妊婦姿で、みんなの度肝を抜いた嫁は、お世辞にもデキがよいとはいえず。

突っ込みどころは満載だった。

でもね。

人を非難することはたやすいけど、そうすることで、気分よく過ごせないこともたくさんあって。

家族というのは、許すことで成り立っている。

なんにも言わないけれども、お義父さんとお義母さんは、態度でそれを教えてくれた。

感謝しても感謝し足りない。

だからね。

あなたができるまで。

わたしは思ったよりも楽しい時間を、日本でもすごすことができたんだ。



つづく

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泣けてまうやろー ( ・_・。)

しかちくの芯の強さに感動して。
お義父さんのおとぼけぶりに爆笑して。
常連さんの優しさに感謝して。

そして、とりぶうの
『家族というのは、許すことで成り立っている。
なんにも言わないけれども、お義父さんとお義母さんは、態度でそれを教えてくれた。』
って言葉に、私は胸が熱くなった。

号泣だよ・・・
「許す心」体のどこか目に付くところに書いておきたいよ。

バカヤロー・・・
泣きすぎて、すぐには買い物に行けないじゃんかっ。

美味しい珈琲を飲んで落ち着くか・・・。


とりぶう、温かい気持ちになったよ。
ありがとう・・・(大泣)

やっぱり

あなた方は凄い!
とりぶうさんが凄いのはわかるけど
しかちくさんも本当に凄いね。
立派です。

導火線が短く 一部の人に
特攻隊長と呼ばれていたこの私には
到底真似出来ないわ(^_^;)

いい話ですねぇ。

浸みました。
許し合うのが家族、か~。
色々考えてしまいました。^^

ところで、このお店が以前うかがった「かつめし」のある洋食屋さん、ですか?
あ、レストランかなw。

No title

・・・・・・んだ!んだ!!

私も同居ですが なんだかんだ言って大変だよね。
とりぶうさんは 妊婦ってこともあるし・・・
いろんなとこに気を使って・・・
でも いい家族が出来てよかった~!!って心から思います!!
私も 持ってるつもりでも・・・ついつい忘れがちな・・・許すって事・・・
また 肝に命じて持ち続けます・・・
でも 私のケーキを無断で食べた時は 許しませんわ~ 笑)

八重yamabuki さん。

いやいや、どうもありがとうございます!
「許すこと」は、自分に言い聞かせてます、常に。
なかなか、できないんだよね~。
それにしても、ほんと、よくこんな嫁になにも言わなかったもんだと、われながら義両親の寛大さにはアッパレだと思ってます。
こちらこそ、あったかいメッセージありがとう~!!

のぶちんさん。

特攻隊長がいなければなにも始まらないので、それぞれに性格のちがった人が必要なんですよね!
店をやってたあの頃は、しんどいことも相当あったんだけど、今はそれほど覚えてないんですよね。
楽しいことはいっぱい覚えてるのに。
忘れることって、スバラシイ~。

すくわかさん。

そうそう、かつめし、メニューにありました!
洋食屋というか、定食屋というか、居酒屋というか。
なんでもありな店でしたね~。
失敗もいっぱいしましたが、笑って許してもらえる家族がいることは、財産です!

イノぶたさん。

ケーキはきっとわたしも・・・!ははは。
最近では、カズノコでバトルになりかけました。
食がらみは、なんだか本能が出てくるのかな~。
イノぶたさんもいっつもえらいなあと思ってます!
なによりも、相方さんと仲いいのが、同居がうまくいってる証拠だよね!
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