出産~あなたができるまで 34ショートショート とりぶうの読むコント~宮古島  出産~あなたができるまで 34 


出産~あなたができるまで 34

テーマ : エッセイ ジャンル : 小説・文学


※よろしかったら最初からどうぞ→あなたができるまで



娘よ。

あなたの頭はそのとき。

まだ羊膜に包まれていて空気に触れていなかった。

しかちくが言うには、その後、助産婦さんがハサミかなにかで破水させたらしい。

そこらへんのことはわたしにはまったく見えないし、痛くてそれどころでもなかった。

たしか、イキな計らいとして、鏡で見せてくれたような気もするけど、見てる余裕がまったくなく。

ていうか、みんなこの状況で鏡見る余裕、あるの!?と不思議に思った。

あるいは、わたしは相当切羽詰った状況だったんだけど、

中には『きゃー、頭、見たい見たい!』と余裕たっぷりの妊婦もいるのかもしれない。

こればっかりは個人差がすごくあるので、どうともいえない。




先代助産婦のおばあちゃんはしきりに、

「も~っちょっとやで~」

とお経みたいにとなえていた。

おばあちゃんは数々のお産を見てきただけに、心強い助っ人というよりも。

まるでちょっとした妖怪だった。



『頭が見えるとすぐに手足がつるんと出てきた、その感覚がすごくうれしかった』

と、いう人の話を聞いてたので、いまかいまかと待ち構えていたのだけど。

そうでもなく。

なんかひっかかってるという感覚のまま、なかなか進んでくれない。

「もういきんだらあかんで!チョウチョの呼吸、ファ~、ファ~や!力抜いて!リラックス!」

助産婦さんが力強くどなる。

「ファ~、ファ~、ファ~」

わたしは必死にリラックスした。

逆説的だけど、リラックスするのに必死になった。

しかしなかなか出ない。

わたしがひたすらファ~ファ~やってると。

「手や!」

しかちくが驚いた声を出す。

あなたは小さな手を、顔の真横に持ってきていたので、それがひっかかって出にくいみたいだった。

「それ、もうちょっと、もうちょっとや!」

助産婦さんはわたしにだけでなく、あなたに、そして、自分に言い聞かせてるみたいだった。

もう痛みは痛いを通り越していた。

そうして。





「出たーっ!」




興奮と喜びと安心の混じった声が聞こえ。

あれ、つるんとした感覚がなかった、と思ってるうちに。

へその緒でつながったまんまのあなたがわたしに見えるように掲げられた。

ふぎゃ、ふぎゃ、ふぎゃ

まだらに白くて赤くて、小さくまるまったあなたは、心もとない泣き声をあげた。

「女の子や~!」

助産婦さんは天下を取ったような晴れ晴れしい声で言った。

男の子だとばっかり思っていたわたしたちは かなり驚いたけど、

性別はどっちでもよかったので、無事うまれてくれたことだけに感謝した。

しかちくは助産婦さんにハサミをわたされ、ヘソの緒を切らされた。

思ったより弾力があったと、しかちくは後に語っていた。

わたしは安心したものの、足先手先の冷たさはハンパなく。

ひたすら寒い寒いと思っていた。

あなたがきれいに洗われ、体重や身長を測られているあいだ。

先代のおばあちゃん助産婦が、みかんを食べさせてくれるという。

それはこの助産院の恒例行事で、ここで出産した先輩ママたちは、

「あれはこころにしみた」

という、ほんわかする行事なのだそうで。

わたしもほんわかするのか、と思っていたところ。

なんと、みかんは冷凍みかん。

それをひとつずつ、口に入れてくれる。

ただでさえ寒い寒いと震えてる身には、そのみかんを食べるのが辛くてしかたなかった。

でもおばあちゃんの、

「どうや、こんなとき、冷凍みかんがおいしいやろ?」

という自信に満ちた口ぶりに、

「はい、ありがとうございます・・・・」

としか言えなかった。



ようやく、あなたはきれいになって、かわいい服を着せられて。

わたしの横に寝かされた。

体重2736グラム、身長46.4センチの。

小さな赤ちゃんだった。



あなたができるまで34 2・2 





感動するのかと思ったけど。

実際、感動よりも呆然とした感じで。

やっと終わったという安心感がいちばんだった。

あとからじんわり、みんなありがとう、と思え。

鬼だと思った助産婦さんが、ちょっと神々しく見えた。

疲れたけど。

おなかの中でぐるぐる動き回ってた正体はこれかと思うと、おかしかった。

そうして。

わたしの妊婦生活が終わり、あなたの人生が始まった。



つづく

(次回、最終回です!)

少しでも面白かったら、下をクリックで応援よろしくお願いします。とりぶうの絵が踊るよ!
FC2Ranking にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ blogranking 人気ブログランキング【ブログの殿堂】 クツログ
ショートショートとりぶうの読むコントの応援をお願いします。
あしたも、お待ちしております。! ブログパーツ 健康食品

コメントの投稿

非公開コメント

やっとやっと。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

☆☆☆生まれたねー☆☆☆

がんばったねー!!
おめでとう。

『感動するよりも安心感が一番だった』
っていうのは、正直な気持ちだよね。
10か月以上ずっとずっと運命共同体で、自分が守るしかなかった子を、無事にこの世に送り出したんだもん。
大きな使命を成し遂げた感でいっぱいだよね。

冷凍みかんより温かい味噌汁の方が、とりぶうは欲しかったみたいだね。
そうか、羊膜に包まれていて出てきたら、破水してないってことなんだ。
きっと私も二人の子供の出産がそうだったんだな・・・
んん、20年以上たって納得したよ。
ありがとうね、とりぶう!! ^▽^

No title

v-352誕生だ~ \(^o^)/v-353

振り返ると色々あったけど この日の為の月日だったのよね~
リラックスに必死って・・・・判るような気がする 笑)
それも頑張ったわね!!

性別を知らないって感動も倍かも!
今はなんでも教え過ぎかも・・・
冷凍みかんって・・・・みんな熱いのかな~とりぶうさんにはちょっと過酷だったかな? ^^)
冷たいのも逆に記憶に残ってるかもね ^^)

しかちくさん へその緒切ったんだ~ドキドキだったかな??
感動したかもね!!

お疲れ様!!ってその時のとりぶうさんに 言いたいわ~!!

おめでとう~!!

ってもう娘ちゃんは大きいけどww

でもやっぱりおめでとう。

みんなでがんばったね!

いや~感動します。

今更ながら

嫁と子供に感謝しようと思います( ̄人 ̄)

No title

感動しました。
今の子どもばかり見ていると、
ついあの時の気持ちを忘れてしまいます。

思春期の反抗期は本当に大変です。
でも、生まれてきてくれた時のことを思えば、
それもどうでもいい気がしてきますね。

ありがとう。

八重yamabuki さん。

ありがとう~!
って12年も前の話なんだけど。ははは。
感動はあとからわいてくるんだよね。
あの痛さから開放されたというのがとにかくうれしくて。
でも、忘れてしまうのが不思議。
人間ってわすれられるから、いいのかな~。
あたたかいおことば、いつもありがとう~!!

イノぶたさん。

ありがとう~!
そのときのわたしからの返事です。ははは。
性別がわからなくても、案外、なんの支障もなかったよ。
最初は男も女もそれほど、かわらないもんね。
いまだにあの冷凍みかんは過酷だったと思ってます。
でも夏に生まれた二人目のときは、おいしかった!

ルーままさん。

ありがとうございます!
なんか、つい最近産んだみたいなうれしさです。ははは。
あれから12年とは思えないくらい、あっという間でした。
いまではその娘の背丈はわたしにあと5センチと迫ってます・・・。

のぶちんさん。

奥さんはきっと、のぶちんさんのやさしさも感謝もぜ~んぶ、わかってると思いますよ!
子どもを産むって、思ったよりもずいぶん大変なことだと実感しました!

羊飼いさん。

あのときあんなに小さかったのに、あっという間に背丈は並んできますもんね~。
反抗期か~。
もうすぐうちもやってくるな~。こわっ。ははは。
でも、自立するための重要な過程なんですよね。
反抗期が来たら、子育ても最終段階なのかもしれないですね。

     カテゴリ

     登場人物
登場人物 とりぶう 登場人物 しかちく
とりぶう=わたし しかちく=夫 
登場人物 うさQ 登場人物 カメ氏
姉=うさQ 弟=カメ氏 

     最近のコメント

     最新記事

全記事表示


     月別アーカイブ

     携帯でどうぞ
QR

     おかげさまです